研究概要 |
本年度は、土壌ガスがどの程度地下の浅熱水活動を反映しているのか、を明らかにするために、阿蘇山火口西側の3つの温泉地区に深度1mの観測孔を設け、ラドン濃度と1m深地温の定期的な測定を行った。得られたデータ数は観測孔当たり140である。研究成果を要約すると以下のようである。 (1)ラドン濃度の測定にはシンチレーションカウンター法を適用し、1分間当たりのラドンの総壊変数を連続して20回求めた。このデータからラドン同位体である^<222>Rnと^<220>Rnの原子数、およびガスの年齢(ラドンガスが生じてからの時間)を算定する手法を考案した。これから予想される総壊変数は、平衡状態・非平衡状態にあるガスのいずれに対しても測定データと良く対応することが明らかとなった。 (2)半減期が相対的に長い^<222>Rnの原子数と降水量,1m深地温,気温,気圧との相関性は低く,振幅の大きい火山性地震が発生した時期には原子数が急増し、ガスの年齢が若くなるという傾向が得られた。最大エントロピー法の適用によって,原子数には28週の周期性が含まれることも明らかになった。 (3)火山活動とラドン濃度との関連を検討するために,3次元の有限要素法により熱水流動の数値シミュレーションを行った。この手法は熱エネルギー保存則と質量保存則に基づく。解析領域中に火山岩と基盤岩の2層を設定し,熱伝導率は領域全体にわたって一定としたが,人工衛星画像を用いたリニアメント解析により断層と推定された部分には大きな浸透率を与えた。また,破砕帯の一部に主火道からの支脈が伸びているものと仮定し,そこでの温度勾配は他の部分よりも大きくした。計算の結果,破砕帯での温度勾配の上昇とともに流体の圧力が低下するという傾向が得られた。これによってガスが流体から分離しやすくなり,ラドン濃度の大きな変動の要因になっていると推定できる。
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