研究概要 |
1.周縁キメラ体の作出 2倍性品種の核型分析と各起源層における細胞当たりの仁の頻度調査を行い,ワケギ品種における細胞キメラ体選抜の基準を設定した.供試した11品種の核型は,主にネギ由来の仁染色体における付随体の有無に変異が観察された.さらにこれら品種の細胞当たりの仁の最大数およびその頻度にも変異が観察された.これらの結果に基づいて,供試品種は4グループ(G)に分類された,また,倍数化した各起源層の仁の数は,2倍性品種の仁の数に倍数的に比例した.今後は,これらの細胞当たり仁の数によるキメラ性検定基準をもとに,既に処理・育成されているキメラ体から耐署性キメラ系統の選抜を行う. 2.花色キメラ体の増殖と合成 キク品種の茎頂部およびセントポ-リア品種の葉身へのパーティクルガンによる金粒子の打ち込みにより,いずれの植物種でも多くの不定芽が得られた.キクでは,植物調整物質を含まない培地条件下でも,パーティクルガン法を用いることにより,不定芽増殖が可能で,しかもそのキメラ性を高い割合で維持できることがわかった.セントポ-リアでは,葉身の表皮層にのみ金粒子を打ち止めることができ,その表皮細胞からの不定芽増殖が可能であった。これらの結果から,打ち込む金粒子の深さを制御することによって,キメラ性の維持やキメラ個体からの変異体の分離の可能性が示唆される.今後は,これらの成果をもとに,周縁キメラ体の安定的増殖技術の確立と花色キメラ体の合成を検討する 3.斑入りキメラ体の選抜 パイナップルの放射線照射によって斑入り突然変異体を得た.これらの変異体から安定的な周縁キメラ体を選抜するため,冠芽部の葉身基部に存在する腋芽からの植物体育成を葉挿しによって試みた.育成した植物のキメラ性は変化し,正常緑色個体,斑入り個体,クロロシス(黄色)個体に分離した.このことから,放射線照射一代植物は,斑入りに対し安定化してないことがわかった.今後斑入りキメラの早期安定化を可能とする増殖法を検討する必要がある.
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