研究概要 |
1.周縁キメラ体の作出と生育特性 イ)細胞当たりの仁の最大数およびその頻度によって分類した‘宮崎',‘竹富',‘バワンメラ-',‘飯盛'を実験に供試し,それぞれの品種における仁形成部位の同定を行った.根細胞当たり仁の最大数は‘飯盛'で2個,‘宮崎',‘バワンメラ-'‘竹富',で3個であった.これら最大3個の仁を有する3品種では,2本のJ字型仁染色体の他に,仁形成部を有する仁染色体(V字型仁染色体)が確認された.以上の結果から,ワケギの細胞キメラ作出においては,種内に存在する仁形成部位の数の変異を考慮し,検出基準を設定することが必要であることがわかった.ロ)夏〜秋季に‘宮崎'の2倍体,4倍体および細胞キメラ体(4-2-2,2-4-4)の生育特性と結球性について調査した.夏季には4-2-2および4倍体に生育は優れた.秋季には4倍体および2-4-4の生育が優れた.冬季に,日長処理条件下で結球性を調査した.12〜14時間日長区において,4-2-2および2-4-4は2倍体および4倍体より早期に結球する傾向にあった. 2.花色キメラ体の増殖と合成 イ)周縁キメラのキク品種‘ポリッシュマ-ブル'を供試し,摘出した茎頂部にパーティクルガンで金粒子(1.6μm)を打ち込んだ.親株と同一のキメラ性を有する黄色株の出現率は67%で,パーティクルガン処理によって効率的に周縁キメラ体を増殖できることがわかった.ロ)ビアラホス(除草剤)を付着させた金粒子をキク品種‘アプリコットマーブル'の茎頂部に打ち込み,LI層の除去効果を調べた.ビアラホス100ppm処理でLI層の除去が可能であることが確認された.以上の結果より,キメラ合成における基礎的操作として必要となる起源層の除去が茎頂部の微細手術によって可能となることがわかった. 3.斑入りキメラ体の選抜 パイナップルの放射線照射によって斑入り突然変異体を得た.これらの変異体から安定的な周縁キメラ体を選抜するため,冠芽部の葉身基部に存在する腋芽からの植物体育成を葉挿しによって試みた.育成した植物のキメラ性は変化し,正常緑色個体,斑入り個体,クロロシス(黄色)個体に分離した.このことから,放射線照射一代植物は,斑入りに対し安定化してないことがわかった.今後斑入りキメラの早期安定化を可能とする増殖法を検討する必要がある.
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