研究概要 |
1. 細胞キメラ体の検出 ワケギの細胞キメラ体の効率的検出法を確立するために,3起源層(L1:表皮,L2:葉肉細胞,L3:根端細胞)の仁数/細胞に関する種内変異を調査した.供試した11品種は仁数/細胞の最大数および頻度によりIV型に分類した.このような変異は,仁染色体の数およびその仁形成能力の差異に起因していることが示唆された.育成した4倍性ワケギの各起源層の仁数/細胞は分類した各型のそれを反映した.これらの結果から,ワケギの細胞キメラ体は仁数/細胞の最大数および頻度によって容易に検出できることを明かにした. 2. 周縁キメラ植物の増殖とキメラ性の安定性 1)細胞キメラワケギのin vivoおよびin vitro増殖中のキメラの安定性について検討した.コルヒチン処理当代には,4倍体のほか4-2-2,2-4-4,2-4-2,4-4-2,4-8-4などの細胞キメラ体が出現した.これらをin vivo増殖すると2倍体,4倍体.4-2-2,2-4-4に収束し安定化した.これら植物は0.125mgl^<-1>BA以下の濃度で安定的に増殖できた.2)周縁キメラ植物の安定的増殖を目的に,キクの周縁キメラ品種の生長点にパーティクルガンで金粒子を撃ち込み,周縁キメラ植物の安定的増殖について検討した.パーティクルガン処理によって増殖した個体の約70%は,親株と同じ花色であった.3)セントポーリアの葉身にパーティクルガンにより金粒子を撃ち込み,不定芽発生の組織学的観察を行った.パーティクルガン処理で誘発したシュートは表皮細胞からの発生した.一方,高濃度の植生調物質(2000ppmNAA,BA)を金粒子と共に撃ち込むと,表皮下の組織も細胞分裂を行った.以上の結果より,パーティクルガンによる金粒子の撃ち込みによる周縁キメラ性不定芽発生の制御の可能性を示唆した.4)斑入りパイナップルの安定的増殖を目的に,in vitroにおける腋芽発生条件を検討した.BAとNAAを添加したMS培地で育成した幼植物を暗黒条件下に置き黄化徒長枝を得た.これら徒長技を4.3mgl^<-1>カイネチン培地に横置すると3〜5の腋芽由来の苗条が発達した.これらの培養法を用いることにより,パイナップルキメラ個体の分離および安定的増殖が容易になると思われる. 2. 周縁キメラの合成 ユリ,カーネーションの生長点は,針による物理的障害を与えても,その傷口は修復した.異なる品種の生長点を傷つけ,それらの傷口に相互に異なる生長点の組織を埋め込みキメラ合成の可能性を検討している.また,最外層を除いた生長点の上部を相互に接着し培養した.これら生長点のドームは接着し生長した.
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