研究概要 |
染色体中の遺伝子DNAやウイルスゲノムDNAあるいはRNAに組み込まれた情報はタンパク質として翻訳され機能する。タンパク質の機能化、すなわち活性化にはリン酸化が重要な働きをしている。すなわち生体における生理変化の基本にあるタンパク質代謝はリン酸化により調節されている。 植物の病害抵抗性においても抵抗性遺伝子がタンパク質リン酸化酵素やタンパク質間相互作用に関わるいわゆる情報伝達関連のタンパク質であることが分かってきている。以上のような背景から本研究ではタンパク質のリン酸化を含むリン酸化代謝の制御による病害抵抗性植物の開発を試みる。本年度は動物分野で実体と機能が解明されているインターフェロンにより誘導される2, 5-oligoadenylate synthetase (2, 5-AS)遺伝子およびcyclic AMP非依存タンパクリン酸化酵素(PKR)遺伝子による形質転換植物(タバコ)で抗ウイルス性について検討し、弱いものの抵抗性が発現することを認めた。2, 5-AS形質転換では、2, 5-AS活性は認められず動物での場合のような不活RNaseの活性化による抗ウイルス機構は存在しないと考えられた。この2, 5-AS形質転換体では2, 5-ASmRNAが多量発現しており、ウイルスRNAとのco-suppressionがウイルス増殖抑制に関連すると考えられる。最近、他の研究グループによって2, 5-ASとRNaseLを同時発現させた形質転換植物の強抵抗性発現が確認された。またPKR形質転換体ではPKR遺伝子が植物核DNAに組み込まれているにも拘らず、PKRmRNAは検出されず、転写されていないと考えられた。この原因については現在検討中である。一方、植物本来のタンパク質リン酸化酵素について注目し、Banno et al (1993)により植物から分離された細胞膜結合型のcAMP依存PKR3種(NPK1, 5, 15)のうちの1種NPK15による形質転換体におけるウイルス抵抗性について検討した。現在その結果について解析中である。
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