本年度は、超微粒子検知システムの開発を目的とした本研究の中で、基本的ハードウェア(測定系)を構築した。検知システムはカウンタ部、データ処理部を核として、センサににおい物質を流すフロー系、温度制御系から構成される。その中で、においセンサ振動子セルの周波数変化をパソコンに取り込むカウンタ部とフロー系を中心に製作した。具体的には、周波数発振回路とパソコンの入力ディジタル・インターフェイス回路を自作して、さらにカウンタ部のシステムの安定性の向上を目指し改良を加えた。4つの周波数振動子セルを組み合わせた検知システムを構築した。本システムは、水晶振動子を用いたこの種のにおい識別システムにおける、(1)定常状態までに時間がかかる、(2)微量の試料に対しての認識が困難であるという欠点を補うことを特徴としているが、数十秒から十数分程度の短い時間で周波数変化パターン・データの取り込みが終了することができた。 試みとして、吸着膜にはとりあえず合成二分子膜を4種類用い(9年度で検討する予定)、地場産業の一つである柑橘類(ゆず、ライム、土佐ぶんたん、ポンカン、夏みかんなど、8種類)のにおい物質に対する吸着膜の振動周波数の変化を記録した。その結果、周波数変化には再現性が見られること、また柑橘類の種類によって特徴のあるパターンを示すことが明らかになった。 この周波数変化のパターンを認識し、目的のパターンを識別するソフトウェア・アルゴリズムの開発や柑橘類に敏感な吸着膜の開発、さらに吸着膜の数を倍の8種類に拡張したシステムの改良を、来年度以降に検討する計画である。
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