研究概要 |
現在は使用されていないが過去の使用のため環境中に存在している化学物質を中心として,免疫系に与える影響を解析した.物質としては,β-ベンゼンヘキサクロライド(β-BHC),P,P'-ジクロロジフェニルジクロロエチレン(DDE),2,4,6-トリクロロフェニルエーテル(CNP)のほか,D-α-アミノベンジルペニシリン(Amp),o-アセチルクエン酸トリブチルエステル(ATBC)を選んだ.まず,in vitroにおけるマウスT細胞の増殖とサイトカイン産生に与える影響を調べた.C3H/Heをα_<s1>-カゼインで免疫し,リンパ節を回収し,抗原存在下で各種化学物質を加えて培養した.その結果,20ppm以上のCNPおよびDDEが,T細胞増殖を強く阻害することが判明した.ATBCは可塑剤であり,培養に用いるプラスチック器具への影響が細胞応答に影響したようである.培養上清中に分泌されるサイトカインとして,インターロイキン2(IL-2)のほか,IL-4,IL-10およびインターフェロンγ(IFN-γ)の量を定量した.どのサイトカイン分泌も物質によって,上昇,阻害,濃度によって上昇と阻害の両方,影響なしなどの複雑な効果が認められた.各種物質が毒性をもつ場合でも,サイトカイン産生に対して必ずしも阻害するだけではなく,細胞膜に損傷を与えて分泌を促すこともありうる.したがって,阻害および促進の両者の効果のため,複雑な影響が認められたと考えられる.以上の実験系は,すでに活性化されたリンパ球に与える影響を調べるものである.そこで,抗原未感作リンパ球に与える影響を調べる実験系が,アレルギーの発症に与える影響を調べるのにより適すると考え,別のin vitro実験系を作製している.また化学物質を動物に投与し,抗体産生に与える影替を調べる実験系を組み立てつつある.
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