研究概要 |
本研究では,食品関連の各物質がアレルギー応答に関係のある免疫応答に与える影響を解析した.まず乳製品の製造に用いられるグラム陽性細菌であるLactobacillus caseiが,IgE産生に与える影響を調べた.鶏卵アレルギーの原因物質の1つであるオバルブミン(OVA)で感作したマウス脾臓細胞をL.caseiとともに培養したところ,IgE産生やインターロイキ4(IL-4),IL-5産生が抑制され,インターフェロンγ(IFN-γ)産生が促進された.またこれらの影響は,マクロファージによるIL-12産生の増強が原因であることも判明した.したがって乳酸菌はIgEが関与するアレルギーの抑制に有効である可能性が示された.またアレルギーに関わる免疫応答に対する影響を調べるための新たな実験系の開発を検討した.すなわち抗体産生はT細胞によって制御されていることに注目してT細胞が産生するサイトカインの種類や量に与える影響を調べられるように,OVA特異的T細胞のT細胞レセプター遺伝子を導入したトランスジェニックマウス由来の脾臓T細胞の作るサイトカインを調べた.この実験系では末梢未分化T細胞のエフェクター細胞への終末分化を観察できる.試料としては脂質代謝系の物質を選び,T細胞の増殖や,IFN-γ,IL-2,IL-4,IL-5分泌への影響を調べた.IgE産生に関わるのはIL-4,IL-5を分泌するTh2型のT細胞である.アセチルサリチル酸はIL-5分泌を抑制した.リノール酸とアラキドン酸は高濃度では測定したすべてを抑制したが,低濃度ではIL-4分泌の抑制が顕著であった.水溶液への溶解度の低い物質の検定法にはまだ問題が残されているにもかかわらず,本実験系によりアレルギー応答に関わる免疫応答に影響を与える食品成分を検索することができる.
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