研究概要 |
生態的河川管理を考えるためのフレームとして、流域の土砂動態と水辺林の成立過程について検討した。山地渓流における土砂生産と流出のズレは,急激な渓床の上昇と下降を招き,横断的に凹凸のある階段状の氾濫原地形を形成する。また,谷底部が広い区間では網状の流路が発達し,流路変動に伴い2次流路,放棄流路が形成される。氾濫原の高低や2次流路などの地形は,その後の土砂動態にも影響をおよぼし,様々な基質・水分条件,攪乱強度・頻度をもった立地環境を提供する。裸地面が洪水によって形成されると木本や草本種子が一斉に侵入し,外観的には樹高のそろった天然性の一斉林が成立することが多い。基質条件と渓流地形はきわめて密接に関連しており,十勝川で認められた主要樹種に関しては,比高を環境傾度として説明できた。 水辺林の機能評価としては、河畔林樹冠が水温に与える影響を定量的に求め、低水温維持のために必要な河畔林帯の延長を明らかにした。魚類に与える影響については、多重スケール解析を実施し、スケールに応じてサクラマス個体数を説明する要因が変わることを明らかにした。この結果は、魚類生息場構造そのものを階層的にとらえる必要があることを意味する。水辺林の造成手法については、特に礫被覆による土壌物理環境の改善について検討した。その結果、礫を被覆することにより地温の上昇が抑えられ、水分も高く保つことができることが明らかになった。さらに、これらの物理的環境の変化は、樹木個体の水分ストレスを改善し、成長量を上げていることも実証された。
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