研究課題/領域番号 |
08556026
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応募区分 | 試験 |
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
飯塚 尭介 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 教授 (30012074)
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研究分担者 |
種田 英孝 日本製紙(株), 中央研究所, 技師補
新谷 博幸 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 助手 (30282693)
松本 雄二 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 助教授 (30183619)
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キーワード | ハイドロトロピック現象 / ハイドロトロピック塩 / リグニン / 脱リグニン / 残存リグニン / アルカリ蒸解 / クラフト蒸解 / クラフトパルプ |
研究概要 |
製紙用パルプの製造におけるパルプ漂白工程から排出される各種有機塩素化合物の、環境に対する負の影響は、パルプの膨大な製造量を考えるならばとりわけ重要である。本研究においては、未晒パルプ中の残存リグニンの多くが、蒸解過程において既にある程度の脱リグニン反応を履歴したものの、パルプ繊維への吸着あるいはリグニン同士の再縮合反応により、パルプ中にとどまっているとの考えから、ハイドロトロピック塩の存在下での蒸解反応あるいはパルプの洗浄が、残存リグニンの低減にどのような影響を与えるかについて検討している。ハイドロトロピック蒸解による脱リグニンは、従来ハイドロトロピック塩の濃厚水溶液により確認されてきたが、極めて顕著な脱リグニン促進効果がハイドロトロピック塩を共存させたアルカリ蒸解においても確認された。このことは、アルカリ蒸解過程において脱リグニンにとって好ましくない上記の反応が顕著に進行していることを示唆している。 このような知見にたって、パルプ洗浄工程へのハイドロトロピック現象の利用の可能性について検討した。現在、最終的な結論を得るに至っていないが、軽度の加温条件でのハイドロトロピック塩溶液による処理によって、パルプ中の残存リグニンが効率的に溶出除去されることが明らかとなった。このことは存在リグニンの脱リグニン抵抗性についての新たな知見を与えるとともに、新しいパルプ漂白システムの可能性を示唆しているといえる。なお、脱リグニン過程におけるパルプ繊維表面の原子間力顕微鏡による観察については、現在実施中であるが、明確な結論を得るに至っていない。
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