研究概要 |
自発摂餌を養魚技術として実用化するため,我が国の主要な養殖魚であるニジマス,マダイ,ブリを用いて,摂餌行動,摂餌リズム,成長,飼料および給餌装置に関する研究を行い,下記の成果を得た. 1)上記魚種は,固体でも群れでも早期に自発摂餌を開始し,自発摂餌のみで長期飼育でき,かつ好成長が得られた. 2)ニジマスは光と水温を制御した年周環境では常に明期に摂餌し,多様な摂餌パターンがみられた.自発摂餌の日周リズムは生物時計で制御されているが,この生物時計は眼球にはないと考えられた.自発摂餌を用いることによって,ニジマスは自ら主栄養素(タンパク質,脂質,炭水化物)を選択して摂取できることが明らかになった.今後は,養殖規模と放養密度との関係,明期のみでの自発摂餌の研究が重要であることが示唆された. 3)マダイを屋外で飼育したところ,自発摂餌を用いると従来型の給餌法より残餌が少ないことが分かった.自発摂餌を明期のみに制限したところ,残餌はさらに減少した.屋内実験では,マダイは主に明期に自発摂餌するが,暗期でも自発摂餌が認められた.また,自発摂餌を行うマダイと他のマダイとの関わりについての行動学的な研究も行った.自発摂餌の日周リズムは生物時計で制御されていることも明らかになった. 4)ブリは人工照明下では主として明期に自発摂餌を行うが,屋外では暗期の自発摂餌が増加するなど,光環境に大きく影響を受けることが明らかになった.自発摂餌を明期に制限することにより,残餌を削減することができた.ブリは報酬量が異なっても摂餌回数を調節して必要な餌量を摂取することが明らかとなった. 5)屋外で使用可能な自発摂餌システムを開発し,マダイで数ヶ月間の実験に用いて有効性を確認した.安定した自発摂餌を行わせるためには摂餌要求の高感度センサと正確な繰出し制御が可能な給餌機が必要である.
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