研究概要 |
本研究は、熱帯果樹の開花の引き金となる環境要因解明に利用できるよう、自然条件下で湿度および温度処理のできる気象処理装置(メテオトロンと称する)を開発することを主目的に計画された。さらに,その実用性を確かめるとともに,熱帯果樹の分枝を対象に開花期に湿度並びに温度処理を行い、開花・結実への反応を水分生理学的に調べようとした。得られた成果は次のように要約される. (1) 樹園地に携行して果樹分技にチャンバを被せ,その内部の温度と湿度を制御できる装置が開発された。この装置は、温度制御ユニット、湿度制御ユニット、樹脂製チャンバ、電源制御ユニットおよび太陽電池から構成され、温度は20〜40℃(精度±0.5℃)、湿度は30〜80%(精度±5%)の間で制御できるようになっている。 (2) 本装置の性能テストによりチャンバ内の気温、湿度ともに仕様を満足することが確かめられた。また、チャンバ内風速も1〜2mと植物に支障のない値であった。 (3) 本装置により熱帯性果樹マンゴの分枝1本を冬季に加温したところ、他の無処理枝には花芽が着生したが、処理枝の花芽は分化せず,温度がマンゴの花芽分化に影響を与えていることが示唆された。無処理枝の果実のいくつかは肥大し8月には数個の成熟果実を得た。 (4) 加温処理した分枝への水の流れと無処理の分枝への水の流れには競合現象が認められた。 本研究で開発された携帯型メテオトロンにより、今まで困難であった自然条件下での温・湿度の高精度の処理が可能となり、熱帯果樹の開花・結実生理のみならず、植物生理現象について新たな知見が得られることが期待される。
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