研究概要 |
本研究では,視床下部GnRHニューロンの神経内分泌活動を指標とする感度と特異性に優れたフェロモン生物検定系を確立し、ヤギやヒツジなど反芻家畜においてよく知られている雄効果とよばれるフェロモン現象の背景となる分子の純化精製を進めること,そして強力な向中枢作用のメカニズムを明らかにすることを目的としている。本年度は,以下に概括されるような実験を行った。 去勢した雄ヤギ(フェロモン活性を持たない)にテストステロンを封入したカプセルを皮下移植して,4週間にわたるandrogen replacementを行い,処置期間中及び処置終了後におけるフェロモン活性の消長パターンと,フェロモン産生部位として可能性が高いと考えられた頭頸部の皮脂腺の発達衰退のパターンの関連について特に詳細な解析を行った。フェロモン活性は,シバヤギの視床下部内側底部に脳定位的に留置した電極より記録されるGnRhパルスジェネレーターの活動を反映した多ニューロン種発射活動の特異的パターンを指標として,生物検定を行った。 その結果,去勢ヤギにテストステロンを持続投与することによって頭頸部の皮脂腺(多の部位では変化が見られずまたフェロモン活性もなかった)は著しく発達し,4週間後には雄ヤギと同様な大きさに達したが,処置を中段すると直ちに衰退し,4週間後には処置前の大きさにまで縮小した。各時期に採取した皮膚組織のエーテル抽出物には,このような形態的変化とよく一致したフェロモン活性の変化が観察された。このことから雄ヤギの頭頸部の皮脂腺において性ホルモン依存性にフェロモン分子が産生されることが明らかとなった。現在,この分子の精製を進めているが,分子量が400以下で弱酸性の脂質であることが推定された。
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