研究概要 |
本研究の目的は、本来感染防御のために接種されるワクチンによって誘導されるウイルス特異的細胞傷害性T細胞(CTL)を腫瘍の免疫療法に利用できないか検討することである。すなわち、宿主が認識するウイルス抗原エピトープを腫瘍に人為的に導入し、腫瘍に抗ウイルスCTLを働かせ、その結果起こる免疫応答により内在性腫瘍抗原を顕在化し抗腫瘍免疫応答を増強する事ができるか検討することである。本実験では、これらのことを検証するモデルとしてマウスのマウス肝炎ウイルス(MHV)感染を用いる。当初、マウスはBALB/cマウスを用いる予定であったが、C57BL/6マウスの方がいろいろな材料が使用可能であることが判ったので、現在C57BL/6マウスにおける各腫瘍(IC-21細胞、EL-4細胞)の増殖に関する基礎データを収集しているところである。 また、C57BL/6マウス(H-2^b)のMHV特異的CTLが認識する主要なエピトープはSタンパク内の510から518番目のアミノ酸からなるペプチド(CSLWNGPHL,H-2D^b)と598から605番目のアミノ酸からなるペプチド(RCQIFANI,H-2K^b)であると報告されている。現在、腫瘍細胞(IC-21細胞、EL-4細胞)にSタンパクを発現させるために、サイトメガロウイルスプロモーターにS遺伝子をつないだDNAをエレクトロポレーションで導入する実験を準備しているところである。MHVに対する免疫が成立しているC57BL/6マウスにMHVのCTLエピトープが発現しているこれらの腫瘍細胞を植え、抗腫瘍免疫応答が増強されるか検討する予定である。
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