研究課題
本研究の目的は、これまで我々が開発した動物用人工心肺装置および回路をよりよいものに改良し、安全に関心術が施行できるようにすることゝ、その場合の操作法を確立することにある。本年度は昨年度の研究成果に基づき、以下の点について検討した。1)操作法の改良従来より使用してきた内部潅流型膜型人工肺を用いて、常温下体外循環と中心冷却併用体外循環との間で比較検討した。その結果、人医領域ではこれまで冷却法が多くの部分において優れていると報告されていたが、今回の術後長期生存下での観察では、それぞれ長所、短所が明確にできた。つまり、常温群では冷却という寒冷ストレスが作用しないために、内分泌学的に変動が少なく、さらに手術時間の大幅な短縮が認められたが、長時間にわたる体外循環では、酸素化が低下することが判明した。一方、冷却群では各種のパラメータの変動が大きく、冷却・加温操作のために手術時間が延長した。しかし、長時間にわたる体外循環でも酸素化は良好であった。その結果常温法は比較的短時間の体外循環に、また冷却法は長時間にわたる体外循環に適していることが判明した。2)人工肺の改良昨年度のより効率の良い回路設定に続き、本年度は動物用の外部潅流型膜型人工肺を試作し、従来の内部潅流と比較検討した。未だ最終的に検討中であるが新しく試作した外部潅流型の方が酸素化が良好で凝固系、血球破壊の面からいっても優れていることが判明した。3)装置の改良:現在引き続き、人工肺と回路の改良のためにヘパリンコート(マルチ-イオン複合体構造、ヘパリン濃度が高く、かつ血中への溶出が適切)した外部潅流型膜型人工肺と非コートとの間で比較検討中である。