研究概要 |
カルシウム結合蛋白であるエクオリンの遺伝子導入により、生物発光測定を介して生細胞において長期間細胞内カルシウム濃度を測定するシステムの開発を行った。 1.エクオリン遺伝子導入トランスジェニックマウスにおける細胞内カルシウム動態の計測 アポエクオリン遺伝子を、Neuron Specific Enoraseプロモータの下流に組み込んだマウスの脳組織を用い,カルシウムによる発光の有無、発光量の容量依存性、発光の脳内部位特異性について検討し、大脳組織で小脳や脳幹組織よりもやや強く遷延する発光が観察した。しかし、エクオリン発光の容量依存性が判定できず、また、NSEプロモータ下流へのエクオリン遺伝子挿入が検出できても発光の観察されない例が多かった。 2.エクオリン遺伝子導入培養細胞における細胞内カルシウム動態の測定 CMVプロモータ下流にアポエクオリン遺伝子を組み込んだ発現ベクターをNIH3T3細胞に導入し,エクオリン遺伝子を高率に発現する株細胞を樹立した。本細胞は10^<-5>M以上のカルシウムに容量依存性にフラッシュ状発光を示した。カルシウム発光標準曲線を作成し、発光量の検出で細胞内カルシウム量判定を可能とした。非刺激時の細胞内カルシウムレベルは測光感度以下であったが、KCl刺激によりフラッシュ状発光を示し、その後のCaCl2による細胞破壊で再び発光が検出できた。 考察と結論 本細胞株の細胞内にはでは、長期カルシウム発光測定に十分なエクオリンの合成があり、細胞興奮によるカルシウム上昇やその後の低下を定量することが可能である。この細胞は、単独でも細胞内カルシウム動態のリアルタイム検出系として利用できるが、目的とする遺伝子をCo-transfectionすることにより生細胞でのカルシウム動態のアッセイ系として利用できる。これにより、成長分化など長期観察の必要な実験系でもカルシウム胴体測定が可能となる。
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