研究概要 |
日本人において多く見られるII型糖尿病のモデル動物の確立は急務である。インスリン分泌のセカンドメッセンジャーである環状ADPリボースを合成する酵素のノックアウトマウスはII型糖尿病モデル動物に成り得ることが考えられるので、昨年度までにマウス環状ADPリボース合成酵素遺伝子(CD38)をノックアウトしたマウスを作製し、今年度はその解析を行い以下の実験結果を得た。 (1) RT-PCR法およびウエスタンブロット法にてノックアウトマウスの膵ランゲルハンス島ではCD38が完全に欠損していることを確認した。 (2) 膵ランゲルハンス島内環状ADPリボース量をラジオイムノアッセイ法により測定したところ、ノックアウトマウスでは高濃度グルコース刺激時の環状ADPリボース量がコントロールマウスと比べて顕著に減少していた。 (3) 膵ランゲルハンス島を分離して、グルコースによる細胞内Ca^<2+>濃度の変化を測定したところ、ノックアウトマウスでは高濃度グルコース刺激時の細胞内Ca^<2+>濃度上昇がコントロールマウスと比べて顕著に減少していた。 (4) 3mg/g体重グルコース負荷試験においてノックアウトマウスの血糖(30,60分値)は正常マウスに比して有意に上昇していた。この血糖値の上昇は膵β細胞でCD38を過剰発現するトランスジェニックマウスと交配したノックアウトマウスでは正常化した。 以上(1)-(4)の結果から、CD38/サイクリックADPリボース情報伝達系による細胞内Ca^<2+>プールから動員されるCa^<2+>がグルコース刺激イシスリン分泌に必須の役割を担っていることが考えられた。 今年度の研究計画は順調に進行し、研究目標は当初の計画通りに達成された。
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