研究概要 |
イ) ペルオキシソーム形成因子(Peroxin)のクローニングとペルオキシソーム病患者異常遺伝子解析: CHO変異細胞ZP107およびZP109に対しペルオキシソーム形成回復活性を有する相補遺伝子PEX1,PEX12の単離に成功,ついで第Iおよび第III群ペルオキシソーム欠損症患児ではそれぞれPEX1,PEX12に変異を持つこと,患児由来PEX1,PEX12変異体は相補活性を有しないことからPEX1,PEX12が第Iおよび第III群疾患の病因遺伝子であると結論した。さらにPEX1温度感受性変異は患者の臨床症状において軽症型を与えるという非常に興味深いかつ重要な知見も見出した。最近,ZP110およびZP119(J群)に対しそれぞれ相補遺伝子PEX14,PEX19の単離に成功している。また酵母相補遺伝子を用いたexpressed sequence tag(EST)search法によりPEX10,PEX16ヒトホモログをクローニングすることができた。これらはそれぞれ相補性群B(VII)およびD(IX)群の患者由来線維芽細胞に対しペルオキシソームの形成を回復させ,かつ患者遺伝子に変異が認められることからこの2つの相補性群疾患の病因遺伝子と断定した。 ロ) 新たなペルオキシソーム欠損性CHO変異細胞株の分離と生化学解析ならびに相補性群分類 P90H/UV法及び蛍光抗体染色法により,先に分類した7種のペルオキシソーム欠損性CHO変異細胞,ZP24/ZP107,Z65,ZP92,ZP105/ZP139,ZP109,ZP110,ZP114,ZP119に加えて,今回新たな相補性群に属するZP124およびZP126を分離した。両変異細胞について細胞融合法によりペルオキシソーム病患者由来線維芽細胞との相補性試験の結果,ZP124は相補性群A(VIII)群と同一相補性群,ZP126は哺乳動物系新規相補性群に属することが明らかになった。以上のことから,ヒトを含め哺乳動物細胞において15の相補性群が明らかとなり,ペルオキシソーム形成には少なくとも15以上の遺伝子が必要と考えられる。
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