研究課題/領域番号 |
08557015
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研究種目 |
基盤研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 展開研究 |
研究分野 |
病態医化学
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
谷口 直之 大阪大学, 医学部, 教授 (90002188)
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研究分担者 |
竹内 誠 キリンビール株式会社, 基盤研究所, 主任研究員
鄭 文玉 (IKEDA Yoshi) 大阪大学, 医学部, 助手 (60252657)
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研究期間 (年度) |
1996 – 1997
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キーワード | 糖転移酵素 / 糖タンパク質 / 糖鎖遺伝子 / リモデリング / remodeling |
研究概要 |
ナチュラルキラー(NK)細胞の細胞傷害作用における糖鎖の関与を検討するため、ヒト赤白血病細胞株であるK562細胞にラットGnT-III cDNAをトランスフェクトし、GnT-IIIを高発現する安定形質転換細胞株(K562-III)を樹立した。NK細胞に対する感受性をK562細胞およびmock transfectantを対照として調べると、K562-III細胞株では、NK細胞の細胞傷害作用に対して著しく耐性になっていることが判明し、これはNK細胞が結合しにくくなっているためであることがわかった。さらに、対照のK562細胞およびK562-III細胞を、ヌードマウスに移植したところ、GnT-III遺伝子導入細胞のみ脾臓にcolonizationをおこした。一方、抗アシアロGM1抗体によってNK細胞をdepleteさせたヌードマウスではいずれの細胞も脾臓に生着した。これらの結果から、癌細胞に対するNK細胞の細胞傷害作用には糖鎖は重要な役割をもつことが明らかとなった。 糖鎖リモデリングによる増殖因子シグナル制御機構の解析を行った。GnT-III遺伝子をラット褐色細胞腫細胞PC12に導入することにより細胞の糖鎖のリモデリングを行い、糖鎖改変細胞における神経成長因子(NGF)による分化誘導への応答性を検討した。GnT-III導入PC12細胞ではbisecting GlcNAc構造が増加していることが確認され、NGFによる増殖速度の変化ならびに神経突起の伸長は認められなかった。さらに、NGF受容体のチロシンリン酸化を検討すると、コントロール細胞では見られるリン酸化が起こっておらず、NGF受容体からのシグナルの伝達に必須な受容体の二量体形成も起こらなかった。遺伝子導入細胞へのNFGの結合はコントロールと比べて変化が認められなかった。以上のことから、GnT-III遺伝子導入によってNGF受容体の糖鎖がリモデリングを受けた結果、NGFが結合した際にシグナルを伝達するのに必要なTrkの構造変化が起こらなくなっていることが示唆された。このように、糖鎖のリモデリングにより受容体タンパク質の機能が修飾されうることがわかった。また、EGF受容体についてもGnT-III遺伝子によるリモデリング系の解析を行い、糖鎖の改変によってEGFの結合が阻害されることを明らかにしている。
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