研究課題/領域番号 |
08557024
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研究機関 | 秋田大学 |
研究代表者 |
中込 治 秋田大学, 医学部, 教授 (70143047)
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研究分担者 |
今川 忠 阪大微研会, 研究開発部(研究職), 部長 (10036478)
中込 とよ子 秋田大学, 医学部, 助手 (40155693)
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キーワード | ロタウイルス / ワクチン / 不活化 / 超遠心法 / Vero細胞 / 抗原性 |
研究概要 |
乳幼児期における重症の急性下痢症の最大の原因であるロタウイルスは、先進国においても発展途上国においても全く同じ様に小児にほぼ100%感染する。ロタウイルス感染の結果起こる重症下痢症の発病を予防するためのワクチンとしては、弱毒化ウイルスによる経口生ワクチン(RRV-TVワクチン)の開発が主流であるが、生ワクチンには腸管増殖時における野生株との組換え体出現の可能性をはじめさまざまな問題点が残されている。本研究では、不活化ヒトロタウイルスワクチンの試作を目的とし、前年度に引き続き、ヒトロタウイルスの80〜90%の血清型をカバーする抗原型をもつVP7遺伝子組換え体という特徴をもつ野生株であるヒトロタウイルスAU64株にタゲ-ットをしぼって研究を進めた。特に本年度では、AU64株の培養細胞への馴化と大量培養系での増殖の最適化を達成した。その結果、AU64株を不活化ワクチン産生用の細胞基質として使われはじめているVero細胞から樹立したVero CL-9細胞で1mlあたり1,000万プラーク形成単位という高い感染価にまで馴化増殖させることに成功した。これはウイルス蛋白に換算すると1mlあたり約15μgに相当した。このような高い感染価をもつ大量培養したAU64株の粗ウイルス液から、蔗糖クッション超遠心法により約20%の回収率で精製ウイルス蛋白を回収した(したがって、培養液1mlあたりの精製ウイルス量は3μg)。さらに、この精製ウイルスをホルムアルデヒドで免疫原性を損なうことなく不活化することにも成功した。このほか、試作ワクチンの前臨床試験に必須であるブタに病原性を示す攻撃ウイルスの作成を、ヒトロタウイルス野生株を直接新生ブタで継代することにより達成した。以上、本研究の成果は、不活化ヒトロタウイルスワクチンの研究開発における確実な基礎を築いたものと考える。
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