研究課題
基盤研究(A)
B型肝炎ウイルス(HBV)のエンハンサー、X遺伝子のプロモーター、ポリAシグナルを用いて、HCVコア遺伝子、エンベロープ遺伝子を発現させるプラスミドを作製した。コア遺伝子、エンベロープ遺伝子のそれぞれについて、5-6匹のファウンダーマウスが得られた。これらからそれぞれ34コピーの導入遺伝子をもつマウスを3匹選び、掛合わせを行ない、F1マウスを得た。これらのF1マウスにおける各導入遺伝子の発現をチェックして発現の良好なマウスをコア、エンベロープのそれぞれについて2系統ずつ選び、独立したトランスジェニックマウスのラインを樹立した。HCVのコア蛋白、エンベロープ蛋白を発現する組み替えアデノウイルスを作製し、マウスに接種した結果、微弱ながら抗体反応が認められた。しかし、これのみでは肝炎は惹起されないため、インターフェロンガンマ遺伝子とHCV遺伝子のDNA同時投与を行なっている。エンベロープ遺伝子トランスジェニックマウスにおいては、肝に24か月間にわたって、炎症、腫瘍等の変化は全く見られなかった。一方 、唾液腺においてシェーグレン症候群類似の唾液腺炎を発症した。この唾液腺炎は、緩徐に進行性であるが、痩せ等の全身症状はきたさず、マウスは24か月齢の寿命を全うした。このシェーグレン症候群類似の唾液腺炎は、慢性C型肝炎患者においても認められることが報告されており、今回の結果は、この病像をよく説明すると思われる。コア遺伝子導入トランスジェニックマウスでは、3か月齢から肝において脂肪滴の著明な蓄積を認めた。この脂肪化(steatosis)は進行性であり、9が月齢では肝重量の50%近くが脂肪となっていた。特記すべきことに、16か月齢以降に炎症の発生なしに腫瘍(肝細胞癌)の出現を認めており、C型肝炎における肝発癌機序の一端が明らかになった。肝発癌抑制DNAワクチンを開発中である。
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