研究概要 |
C-1カラムは、末梢血中の好中球・単球・血小板を吸着することが明らかとなっている。この効果発現の機序を推定するために漬瘍性大腸炎(UC)患者末梢血に対して以下の検討を行った。(1)好中球機能:PMA刺激における活性酸素産生能は健常人(NC)に比し低下していた。(2)血小板機能:活性化血小板はNCに比して増加していた。この活性化血小板は、UC患者における末梢血好中球活性酸素産生能をより増加させる能力を示した。(3)単球機能:に関しては、UC末梢血単球において、成熟型・IL-10低産生型単球であるCD14+CD16+double positive(DP)細胞が有意に低下していた。またこの低下の程度は大腸粘膜内の単核球浸潤と有意な逆相関の関係にあった。この成熟型単球は未成熟単球であるCD14++CD16-細胞に比し有意に活性化血管内皮への接着率が増加し局所遊走性が増加していた。以上よりDP成熟単球は、UCの炎症早期に局所に遊走し炎症の持続に関与していることが推定された。以上のようにG-1カラムによる抗炎症効果の一旦は、活性化血小板吸着に対する効果が主ではないかと想定する結果が得られた。 この食細胞吸着方は、急性期の炎症に対して有効であったが、一方で当時提唱された白血球(リンパ球)吸着療法は、持続炎症症例での抗炎症性が高いことが明らかとなり、末梢血リンパ球の検討を加えた。(4)UC患者記憶T細胞において、持続活性化マーカーとしても認められる,Fasl,表出は有意に高く、これらの除去がUCの炎症持続を改善させている可能性が考えられた。しかし一方で末梢血内のリンパ球数は、全身の約2%にすぎず、特異抗原に対応したリンパ球除去のみによる抗炎症作用とは考えにくく、カラムからの放出された血漿成分が何らかの抗炎症作用を担っている可能性があると考え、カラムからの流出血漿の、単核球-血管内皮反応性に与える影響を検討した(5)カラムからの流出血漿添加群でより高度の単核球migrationが認められ、むしろ血漿成分はこのカラムの抗炎症効果には関与しないのではないかと現在は想定している。以上より当初想定していた末梢血に対する免疫調節療法の機序は未だに納得のできる説明はなしえていない。現状で最も効果の関係のありそうな血液成分は、活性化血小板の除去によると考えるべきであろうが、持続的な抗炎症効果はやはりリンパ球除去による治療でより効果的に認められている。今後リンパ球動態を含めた解析が必要であろうと考えている。
|