研究概要 |
[目的] 臓器別癌死亡率の第一位を占める肺癌の対策として、早期発見による、早期手術が求められる。本研究はハイリスク患者の集団検診を実施可能とする喀痰中癌細胞自動識別装置の開発を目的とした。[結果]1)測定条件の設定 ポルフィリン誘導体(PH1008)(HPD)の正常細胞と肺癌細胞の識別に適性な励起波長は395±5nm,蛍光波長633nm,HPD濃度0.1μg/mlであった。2)細胞処理条件の検討 肺癌細胞樹立株A549細胞を用いてHPD濃度と細胞生存率の関係を検討し、37℃10分間処理条件では濃度5μg/mlまでは生存率80%であり、反応時間は0〜10分以内で十分であり、蛍光強度は生細胞数に依存しない。3)細胞種による蛍光強度 各種肺癌細胞株(腺癌:A549,LCSC#1,扁平上皮癌:EBC-1および小細胞癌:LU65),ヒト正常細胞として肺線維芽細胞、B7XLS細胞、好中球、単球をコントロールとしてこれらを一定時間培養後に単離し、HPDと反応させ、微弱蛍光カメラにより細胞の蛍光強度を比較検討した。扁平上皮癌、小細胞癌、腺癌の順に強い蛍光強度を示したが、線維芽細胞も僅かに蛍光が観察された。しかし、BAL液細胞、好中球、単球の蛍光強度は無視できる程度であった。生標本、アルコール固定標本共に正常細胞と各種癌細胞間の蛍光強度の差が認められたが、生標本とアルコール固定標本間においては蛍光強度の差は僅かであった。[考察] 以上平成10年度まで実用化を目指したが、実用化段階でその識別のための感度、特異性などとの関連で、微弱蛍光カメラ(CCDカメラ)の特性、喀痰処理、HPDに関して更に検討すべき事項が残された。
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