神経再生でのSchwann細胞の関与の様態は各種の成長因子、receptorや接着分子などにより明らかにされつつある。ヒトの神経機能再建においてはautograftが一般に用いられているが、自家神経移植は採取できる部位が限られるため、なり長く太い人工神経の開発が期待される。本研究では生きたSchwann細胞を人工神経に利用する方法を開発する目的で、Schwann細胞の大量培養法の開発、再生チューブへの適用法をさぐる。まずより長い神経再生をめざしてチューブ素材に着目、polyglycolic acidを用い、collagenで被覆、各種成長因子をまぜて、ネコの末梢神経において最大25mmのほぼ完全な神経再生が得られた。再生神経は電顕を含めた形態学的観察、電気生理学的観察にて確認できた。またHRPを用いた軸索輸送の実験でも再生神経内を経由して神経細胞へと運ばれることが証明できた。 一方、ヒトSchwann細胞を生検神経よりとりだし、大量培養する計画は現在進行中である。疾患にもよるが、一般に高齢の患者からの一定組織量からの細胞生産率は良くない傾向にある。したがってより効率のよい条件を見いだすために、高齢ラットの少量の坐骨神経を用いて培養条件を検討中である。とくに培養液、添加物質濃度(cyclic AMP作動物質など)、培養皿コーティング物質を検討中である。またSchwann細胞がアポトーシスを生じる可能性がわかり、そのメカニズムについても検索している。
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