研究概要 |
末梢神経系の神経再生でのSchwann細胞の役割は大きく、生きた細胞を人工神経に利用する場合に必要な条件として各種成長因子があげられる。我々はまずSchwann細胞のアポトーシスに着目し、その誘導因子や阻害条件について調べた。最近、膜の研究でのみ扱われていた脂質がsecond messengerとして注目されている。1989年Okazakiらが、スフィンゴ脂質であるセラミドが分化誘導時にシグナル伝達物質として機能することを報告して以来、神経系においてもセラミドの作用についての研究がなされている。神経系においては、セラミド自身によるアポトーシス誘導、突起形成促進、軸策の伸長促進等、細胞種によりその作用が異なることが知られているが、末梢神経系やSchwann細胞におけるその効果の報告はほとんどない。末梢神経系の再生に大きく関わるSchwann細胞におけるその効果を調べることにより、末梢神経系の再生への一助となる可能性が秘められている。我々は培養Schwann細胞に透過性ceramideを用いてin vitroにおけるその効果を調べた。妊娠20-21日目ラットの胎児sciatic nerveからprimary cultureし,継代培養4回目までのSchwann細胞を用い、無血清培地に交換し,2日後透過性セラミドのN-acetyl-D-sphingosine(C2-ceramide)を添加し時間的に観察し、TUNEL法を用いて染色し,陽性率を調べた。その結果、Schwann細胞におけるセラミドの効果は,アポトーシスであり,その作用は数時間後より有意となり、12時間内に作用は減弱することがわかった。 今後、細胞内セラミドの増減制御と神経細胞の分化過程が解明されれば、神経系の再生制御がセラミドを介して可能となりうる。培養細胞を使用してのセラミドの定量は可能であり、Schwann細胞および神経細胞の分化過程でのセラミドの動態の解明を研究していく方針である。
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