研究概要 |
表皮水疱症は多くの病型に分類されるが,いずれの病型においても先天的に皮膚が脆弱であり、軽度の機械的刺激で容易に水疱,潰瘍を生ずる.その中でも劣性栄養障害型とHerlitz致死接合部型は最重症型であり,表皮水疱症の中でも最も予後の悪いタイプである。両者はともに常染色体劣性に遺伝する。本症では先天的に皮膚基底膜のVII型コラーゲン,あるいはlaminin 5の形成障害が基盤にあることが最近解明された.また一部の患者においてはそれぞれの遺伝子の変異も確認されるに至った. 本研究の目的は、表皮水疱症の最重症型である劣性栄養障害型ならびにHerlitz型の日本人患者におけるVII型コラーゲン,およびlaminin 5の遺伝子変異部位を同定をしうる確実な遺伝子診断法を設定し,DNAレベルでの出生前診断法を確立することにあった。本研究では、実際に劣性栄養障害型ならびにHerlitz致死型表皮水疱症患者を全国から集積した。患者の皮膚を基質として、VII型コラーゲン,およびlaminin 5に対するモノクロナール抗体を用いてタンパクレベルの異常を確認した。次に、免疫電顕にてVII型コラーゲン、ならびにlaminin 5の各構成成分が正常皮膚基底膜部のどの部位に局在し,それぞれどのような立体的相互関係を呈しているのかを同定した。 続いて、個々の劣性栄養障害型,ならびにHerlitz型表皮水疱症患者からDNAを抽出し、個々の症例におけるVII型コラーゲン,あるいはlaminin 5における遺伝子変異部位をDNAレベルで確認した。 VII型コラーゲン遺伝子の変異部位が同定された劣性栄養障害型表皮水疱症,あるいはlaminin 5遺伝子の変異部位が同定されたHerlitz致死型表皮水疱症の家系について,罹患児出産の既往がある母親が再び妊娠し出生前診断を希望した場合、実施した。すなわち、妊娠11週での絨毛膜採取、あるいは妊娠13週での羊水穿刺により胎児由来細胞を採取し、胎児DNAを抽出した。上述の計画にて確立した遺伝子診断法に基づき胎児DNAを検索し、出生前診断を施行することが出来た。
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