研究概要 |
本研究では,人体深部の腫瘍を加温可能なリエントラント型加温を設計・試作し,ファントム及び動物による加温実験結果から,本装置の加温特性を医学的また工学的に総合評価・検証した.以下に主な成果を示す. 1.リエントラント型空胴共振器ならびに励振用アンテナの設計・試作 まず,コンピュータ・シミュレーション手法により,空胴共振器の大きさと加温特性との関係を解析し,その直径:120cm,高さ:120cm,共振器内のリエントラント部直径:40cm,リエントラント間隙長:40cmとした.そして,本補助金によりこの空胴共振器及び電磁界を励振するためのループアンテナを試作した. 2.周波数可変発振器ならびにインピーダンス整合器の設計・試作 空胴共振器内に有効に電力を供給するためには共振器の共振周波数と励振周波数を一致させなければならない.また,高周波数電力を空胴共振器内で有効に消費するためには,インピーダンスの整合を取らなければならない.本補助金により周波数可変発振器及びインピーダンス整合器を試作した. 3.高周波アンプならびに安定化電源の設計・試作 深部腫瘍を43〜44℃に加温するための高周波アンプ(最大電力300W)及び電源を,本補助金により試作した. 4.加温システム制御用ソフトウェアの開発 本補助金により加温システム全体の制御用コンピュータを導入し,制御用ソフトウェアを開発した. 1.〜4.で試作した本加温システムを用いて加温特性の評価を実施した.その結果,実験用動物の加温実験までには至らなかったが,本システムによれば,人体等価ファントムの深部をほぼ同心円状に加温可能であることを確認した.なお,ファントムの温度計測には,本補助金により購入した高性能サーモグラフィ装置を使用した. 以上のことから,本研究の初年度の目的をほぼ達成することができ,臨床応用への可能性が示されたと考えている.
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