研究課題/領域番号 |
08557057
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
笹井 啓資 京都大学, 医学研究科, 助教授 (20225858)
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研究分担者 |
藤林 靖久 京都大学, 薬学研究科, 助教授 (50165411)
平岡 真寛 京都大学, 医学研究科, 教授 (70173218)
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キーワード | 低酸素細胞 / 低酸素細胞分画 / Comet Assay法 / DNA障害 |
研究概要 |
本年度は主に、Comet Assay法を用いて求めた腫瘍内低酸素細胞分画を従来の放射線生物学的手法(clonogcnic assay)で求めた低酸素細胞分画値と比較、検討した。 用いた細胞はマウスに移植したSCCVIIおよびEMT-6腫瘍細胞である。我々が行った以前の研究によると、SCCVII腫瘍は急性の低酸素細胞を多く含む一方、EMT-6腫瘍は慢性の低酸素状態となる傾向がある。慢性低酸素細胞においては細胞の酸素濃度が幅広く分布することが予測され、この場合放射線照射によるDNAの障害の程度が段階的なばらつきを示しと考えられた。したがって個々のDNA障害の差を利用したComet Assay法では、酸素に富んだ細胞(障害の強い細胞)と低酸素細胞の分離・同定が困難であると予測された。しかし、結果は、Comet Assay法によって検出されたDNA障害の分布は、両腫瘍とも、大きく2群に分離し、障害の小さな群の割合として求めた低酸素細胞分画は、clonogenic assay法で求めた値と有意に相関関係を示した(相関係数はSCCVIIで0.85、EMT-6で0.75)。異なる低酸素状態をとる2腫瘍において、個々のDNA障害の差を検出するComet Assay法と、細胞の生死をエンドポイントとするclonogenic assay法との間で、このような相関関係が得られたことは大変興味深いことであるとともに、今後、放射線照射時の低酸素細胞分画値の測定を目的とした、臨床応用の可能性を大いに示唆するものであると考える。 現在、我々は術中照射症例および子宮頚癌の腔内照射症例を対象に、Comet Assay法を用いた、低酸素細胞分画の測定を計画しており、その細胞採集方法等について検討中である。
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