研究概要 |
我々は,脂肪組織である大網から新規血管新生因子の精製を試みた。脂肪組織は血管の豊富な組織で、その血管新生作用が以前から注目されており、中でも外科的に利用しやすい大綱が、脳外科、胸部外科、心臓血管外科領域で主として自家移植という方法で臨床応用されてきた。以前から大網組織に存在する血管新生活性の本体を精製しようとする試みはなされているが、最終精製に至っておらず、活性本体の親水性や疎水性等の化学的性質すらも定説がない。 我々は、血管内皮細胞の遊走活性を指標に、ブタ大網(3Kg)に5倍量のメタノールを加えホモジナイズ(ポリトロン)した。抽出液を遠心分離(18,800g,30min)し、減圧下ロータリーエバポレータで200mlまで濃縮した。濃縮液に水(2.8リットル)を加え、クロロホルム、メチルエチルケトンで順次液々分配を行いメチルエチルトン画分を得た。メチルエチルケトン画分はシリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム・メタノール系)に付し、活性フラクションをPTLC(Silica:クロロホルム・メタノール-水)で分取した後、HPLC(LATROBEADS 6RSP-8005:アセトニトリル-水)に付し、活性化合物Aを含む画分をHPLC(LATROBEADS 6RSP-8005:ヘキサン・イソプロパノール-水)でリクロマトして、活性化合物Aを約0.3mg得た。この活性化合物Aを質量分析したところ前回と同様にPos.-FAB-MSで771.4にM+Naと予想されるピーク、Neg.-FAB-MSで747.9にMと予想されるピークが得られた。また、親イオンスキャン、娘イオンスキャンを測定したところ、活性化合物Aは、1-Palmitoyl-2-oleoyl-phosphatidylglycelolであると推定した。活性化合物Aと1-Palmitoyl-2-olcoyl-phosphatidylglycelolの標品の1H-NMRスペクトルを測定したところ、両化合物のスペクトルは、ほぼ一致した。また、1-Palmitoyl-2-oleoyl-phosphatidylglycelolのMigration活性を測定したところ、活性が認められた。
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