研究課題/領域番号 |
08557060
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
清野 裕 京都大学, 医学研究科, 教授 (40030986)
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研究分担者 |
堀越 大能 三共株式会社, 第一生物研究所, 主任研究員
石田 均 京都大学, 医学研究科, 助教授 (80212893)
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キーワード | 糖尿病 / 膵β細胞 / ATP感受性K^+チャネル / スルフォニルウレア受容体 / インスリン分泌 / ブドウ糖 / パッチクランプ法 |
研究概要 |
インスリン非依存型糖尿病(NIDDM)の経口血糖降下剤として、sulfonylurea(SU)剤は広く臨床に用いられているが、かなりの症例で無効となり(二次無効)、血糖コントロールが困難となる。一方、我々はNIDDM状態下の膵β細胞では細胞内のブドウ糖代謝機構に障害が存在する事実を明らかにして来た。抗不整脈剤の1つであるcibenzolineはその副作用として低血糖発作を誘発することが知られているが、我々はこの薬剤がSU剤とは異なりSU受容体(SUR)との結合を介さずにK^<ATP>チャネル活性を抑制する事実を明らかにしている。そこで膵β細胞内糖代謝障害時におけるcibenzolineのK^<ATP>チャネル活性に及ぼす効果とともに、SURならびにK^+チャネルドメイン(Kir6.2)の発現蛋白への結合能について検討した。ミトコンドリア内での酸化的リン酸化反応のmetabolic uncouplerの2.4-dinitrophenol(DNP)を用いて人為的に膵β細胞内に糖代謝異常を導入するとSU剤のglibenclamidoのK^<ATP>チャネル抑制の低下とともに、インスリン分泌促進効果の消失を認めた。一方、cibenzolineに対するK^<ATP>チャネル抑制の感受性を検討したところ、前者とは異なりDNP存在下においても感受性に変化を認めず、明かなインスリン分泌促進を認めた。そこでSURとKir6.2の発現蛋白を用いて〔^3H〕ラベル化した各々のリガンドを用いて特異的結合を検討したところ、cibenzolineはSURではなくKir6.2直接結合することが明らかとなった。以上より膵β細胞内に糖代謝障害が存在し、SURとKir6.2間の機能的連関に障害が存在する場合であっても、Kir6.2に直接結合するcibenzolineはK^<ATP>チャンルを抑制し、インスリン分泌を増強し得ることが明かとなった。今後Kir6.2に対してより選択性の高い薬剤を開発することが、SU剤の二次無効例に対しても、有効である新たな治療法の確立につながるものと期待される。
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