研究概要 |
脂肪細胞がただ単なる脂肪を蓄積する細胞でなく、各種の物質を産生、分泌している能動的な細胞であるという概念が提唱されて久しい。この脂肪細胞の個体レベルでの働きを明らかにするには、脂肪細胞のないモデル動物を作製するのが最適と考えられた。そこで脂肪細胞の分化に重要な働きをしているPPARγ遺伝子のノックアウトマウスの作製を試みた。しかしながら、このマウスの作製途中において、PPARγ遺伝子のノックアウトにより胎児の時期に死亡することが他の研究室により明らかにされた。そこで、他の方法を検討した。PPARγの各種変異体を作製したところ、C端側の16個のアミノ酸を欠除した変異体をアデノウイルスベクターを用いて3T3-Ll前駆脂肪細胞に発現すると、その分化が有意に抑制されることを見出した。今後、この変異体を脂肪細胞特異的プロモーターaP2を用いて発現するトランスジェニックマウスを作製すれば、脂肪細胞の欠除したマウスが得られる可能性があると考えられた。 一方、このPPARγ遺伝子の変異により各種の疾患が発症する可能性が考えられた。そこで、まず脂肪細胞がほとんど認められない脂肪萎縮性糖尿病患者におけるPPARγ遺伝子のコーディング部分の異常についてPCR-SSCP法について検討した。その結果、PPARγ遺伝子には異常はなく、脂肪萎縮性糖尿病の重要な責任遺伝子とは考えられなかった。次に2型糖尿病者25名についても,同様の検討を行い12番目のProのAlaへの変異を見出した。この変異の頻度について、303名の2型糖尿病者と230名の健常対照者を比較検討したが、両群でその頻度に有意差を認めなかった。
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