本研究においては酵母細胞での発現系を使用して、水チャネルであるAQP2の機能と構造の相関を調べた。発現系には若干の改良が加えられた。内因性プロテアーゼ欠損酵母株BJ3505を使用し、ガラクトース誘導下で30度で培養し、ショ糖密度勾配分画法により細胞内ベジクルを高密度で採取した。この分画へのAQP2の集積は蛋白のウエスタンプロット法で確認した。このベジクルの浸透圧水透過性をストップトフロー錯乱光分光光度計で測定したところ、22倍の水透過性亢進が認められ、機能的水チャネルの発現系として優秀な系が確立された。この系を使用して、AQP2のアミノ酸配列に各種の変異を導入し、水通過に必須の部位を検索した。この際にAQP2の遺伝子変異により腎性尿崩症になっている患者で同定されている遺伝子変異も参考にした。その結果はAQP2のLoop CからLoop Eまでの間に変異が導入されると水透過性が著しく低下することが分かった。なおウエスタンプロット法で確認した蛋白発現量には差が無かった。一般に遺伝子変異体の発現において、蛋白の細胞内でのプロセシングが変わり、細胞表面まで発現せず、機能解析が不可能のことが多い。その意味でも酵母細胞での発現系の確率の意義は大きい。現在この系を使用し、明らかになった重要部位をさらに細分化し、必須のアミノ酸の同定に全力を挙げている。この結果は直ちに水透過阻害剤の開発につながると考えている。
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