研究課題/領域番号 |
08557072
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
坂井 義治 京都大学, 医学研究科, 助手 (60273455)
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研究分担者 |
田村 康一 藤沢薬品工業株式会社, 開発第1研究所, 主任研究員
山岡 義生 京都大学, 医学研究科, 教授 (90089102)
尾崎 信弘 京都大学, 医学研究科, 助手 (50211818)
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キーワード | Liver / Liver transplantation / Immunosuppression / LRLT / Tacrolimus' |
研究概要 |
肝移植における術後免疫抑制療法はタクロリムスの登場により一層確実なものとなったが、過度の免疫抑制は感染症の発生頻度を増加させ、不足になると拒絶反応が発現することとなり、至適投与量を病状にあわせて的確に判断することが極めて重要である。我々は、タクロリスム血中濃度測定により投与量を適宜変更することで対処してきたが、タクロリムスの活性型代謝産物の存在が明らかになるなど、血中濃度測定のみに依存する方法には限界があることも自明である。我々はタクロリムスがリンパ球細胞質内で1L-2の生成を抑制するシグナル伝達機構をin vitroでシュミレートする5重合体生成能を測定し、タクロリムス及びその活性型代謝産物による免疫抑制効果の総和を評価しうるかを検討した。ラット肝移植モデルによる検討では、5重合体生成能はタクロリスム血中濃度と1:1で相関し、いずれの代謝産物も有意レベルでの検出は認めなかった。これにより、安定した免疫抑制が得られ、感染の合併がない状態では代謝産物の蓄積はおこらず、血中濃度が直接免疫抑制効果の指標となりうることが明らかとなった。臨床例においても、術後合併症のない例では4重合体生成能はタクロリムス血中濃度とよく相関した。乖離の見られた例では5重合体生成能はタクロリムス血中濃度を下回る場合が殆どであり、代謝産物の明らか蓄積も認めなかった。したがって、ヒト同種肝移植におけるタクロリムス活性型代謝産物の臨床的意義は低いと考えられ、むしろタクロリムスの免疫抑制活性を阻害する因子が、特に感染の合併や肝機能低下時に増加する可能性が示唆される結果となった。活性阻害因子としては、感染に対する反応として放出されるサイトカイン等の生理活性物質の関与が疑われ、今後の検討が必要と考えられた。
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