研究概要 |
ブタ血管内皮細胞にGnT-IIIを導入し細胞表面の糖鎖デザインのリモデリングがヒト自然抗体に対する抗原性を抑制するかを検討した.遺伝子導入は発現ベクターpCAGGS(β-actin promoter)にヒトGnT-III,ヒトα1,2Fuc Tのc-DNAを挿入し,リピッド法によりSECに導入した.抗原性ではGnT-III transfectantsはparental SECに比しNHSで65〜80%,IB-4レクチンで50〜70%の抗原性の低下を示した. 一方、全臓器にGnT-III活性を過剰発現したGnT-IIIトランスジェニック=マウスを用い、ヒトに対する抗原性の制御に有効かどうかを生体レベルで検討,解析した.本来,正常マウスでも高い活性を認めていた腎臓ではヒト正常血清に対する反応性は変化しなかった.しかし,過剰活性を認めた心臓,肺では66KDa以下の糖タンパク質について劇的に反応性が減少した.また,脾細胞を用いた抗原性の解析では,トランスジェニック=マウスは,正常マウス脾細胞に比し約80%ヒトに対する抗原性の低下を示した。今回我々は,GnT-IIIトランスジェニック=マウスを用い、ヒト自然抗体に対する抗原性がGnT-IIIの活性発現に伴い抑制されることをつきとめた。糖鎖遺伝子導入による糖鎖デザインモリデリングの可能性は,“もともと活性のない臓器"に過剰に酵素活性を発現させることができるかが重要なポイントであることも明らかになった。
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