研究分担者 |
星野 健 慶應義塾大学, 医学部外科, 助手 (70190197)
松藤 凡 聖路加国際病院, 小児外科, 副医長(研究職) (80190502)
大西 誠人 テルモ(株), 研究開発センター開発研究所, 研究員
渡辺 修一 慶應義塾大学, 医学部生理学, 助教授 (60138120)
長田 義仁 北海道大学, 大学院・理学研究科生物学, 教授 (60007804)
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研究概要 |
1. 仙骨神経電気刺激に対する結腸,直腸および内肛門括約筋の反応 前年度までの研究から,自然排便時に大腸肛門は特徴的な運動パターンを示すことが判明した.すなわち,(1)結腸では巨大蠕動が出現し直腸または内肛門括約筋まで伝播する.(2)この巨大蠕動波に先立って直腸は弛緩する(弛緩収縮連関).(3)内肛門括約筋は弛緩する.の3点が排便において重要な役割を果たしており,排便は結腸,直腸,肛門括約筋の連続した協調運動の結果である.今回は麻酔下に第1,第2仙骨神経を露出し,直接電気刺激した際の大腸肛門の反応を検討した.結果:(1)結腸から直腸へと伝播する収縮が見られた.(2)直腸は弛緩または収縮を示した.(3)内肛門括約筋は弛緩した.(4)さらにこれらを組み合わせることで自然排便時の運動に類似した運動パターンが再現可能であった. 2. 形状記憶高分子ゲルを用いた人工肛門括約筋の作製 アクリル酸メチルとステアリルアクリレートの共重合ゲル(混合組成比3:1)である形状記憶高分子ゲルは,転位温度37℃で温度変化により38℃付近で弾性率が急激に変化する.高温ではゲルの伸展性は増加し,外力が除かれると直ちに元の形状に復する.低温では伸展性が減少し変形しにくい.すなわち筋組織と類似した変化が再現可能である.本ゲルを用いて円筒形の人工肛門括約筋を作製した.犬の結腸をこの人工括約筋に通して,巨大収縮を誘発し低温時と高温時の便の通過性を比較した.(1)低温では,腸内容はゲル部を通過せずその口側に貯留した.(2)高温では蠕動による腸内容の移動でゲルは開大し便は排泄され,便が無くなると元の形状に復した.以上より本ゲルは,人工肛門括約筋の機能を代償可能である.さらに本ゲルをシリコン膜で覆い,このなかに任意の温度の液体を注入することでゲルの弾性をコントロールできる長期埋め込み用の人工肛門括約筋の作製を行った.現在犬を用いて試験中である.
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