| 研究概要 |
補助的一時的部分同所性肝移植(Auxiliary Temporal Partial Prthotopic Liver Transplantation(ATPOLT)の動物実験を計画するにあたり、まず,総担管結紮1週間後に肝左葉切除を行いことによりfulminant hepatic failureモデルを作成し,その病態に活性酸素障害がいかに関連しているかを検討した。[方法]雄性ビ-グル犬の総担管結紮により,閉塞性黄疸モデルを作成し,1週間後に肝左葉切除を施行した。実験1として,非閉塞性黄疸肝切除群,1週間閉塞性黄疸肝切群を作成した.実験2として,1週間閉塞性黄疸肝切群に一週間5%Glucose 1ml連日皮下注した群(D5%群)とN-acetylcysteine150mg/kg1ml連日皮下注した群(NAC群)を比較した。測定項目として,好中球の活性酸素産生能をflow cytometryで測定した(DCF-index).また,肝細胞oxidative stressは,HPLCにより肝組織内の還元型グルタチオン(GSH)と酸化型グルタチオン(GSSG)を同時測定して,GSSG/GSH値で検討した.[結果]実験1.Hepatocellular oxidative stressの指標である肝組織GSSG/GSHは,非閉塞性黄疸肝切除群に比較して,1週間閉塞性黄疸肝切群にて有意に高値であった.末梢血中における好中球oxidative stress(DCF-index)は,1週間閉塞性黄疸肝切群は非閉塞性黄疸肝切除群に比し,有意に高値となった(p<0.01).肝組織内浸潤好中球oxidative stressは,1週間閉塞性黄疸肝切群は非閉塞性黄疸肝切除群に比し,有意に高値となった(p<0.05).実験2.NAC投与群はD5%群に比してGOT値の改善が認められた.Hepatocellular oxidative stressの指標であるGSSG/GSHはNAC投与により低下した.NACの投与により門脈血流量,肝組織血流量の有意な上昇を認めた.しかしながら,好中球oxidative stressは,末梢血,肝組織中も,NAC投与で上昇を認めた.[結論]Free radical scavengerであるNAC投与すると,肝機能,hepatocellular oxidative stressが改善されるが,好中球oxidative stressは上昇した.閉塞性黄疸時肝切除後の肝機能障害にhepatocellular oxidative stressが関与し,oxidative stressの治療は効果的である可能性が示唆された.しかし,好中球oxidative stressの抑制は,治療効果につながらない可能性が示唆された.
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