研究概要 |
補助的一時的部分同所性肝移植(Auxiliary Temporal Partial Orthotopic LiverTransplantation(ATPOLT))の動物実験を計画するにあたり,まず,総胆管結紮1週間後に肝左葉切除を行うことによりfulminant hepatic failureモデルを作成し,3日後にdonor犬より肝左葉を生体肝移植の手技を用いて摘出し,これを移植するモデルを作成して検討した.このモデルについて,移植後にN-acetylcysteine(NAC)を投与する群と,非投与群(5%glucose持続投与)とを作成した.測定項目として,(1)血液中の好中球の活性酸素産生能をflowcytometryで測定した.(2)肝ミトコンドリアoxidative stressとして,肝ミトコンドリア分画の分離後,液体クロマトグラフィーにより肝ミトコンドリアの還元型グルタチオン(GSH)と酸化型グルタチオン(GSSG)を同時測定して,GSSG/GSH値で検討し、また、ミトコンドリア分画のmalondialdehyde値を測定した.(3)肝ジヌソイド内皮細胞機能は,ヒアルロン酸を測定した.(4)肝細胞障害は血中のα-glutathione-S-transferase(αGST)濃度で検討した.[結果]現在までに,両群とも5例、合計10例の手術に成功した.48時間後のデータとして,好中球oxidative stress,ミトコンドリアoxidative stressは,無治療群で高値であった.ヒアルロン酸値,αGST値も無治療群で高値であった.NAC投与によりミトコンドリア機能障害の改善が認められ、術後生存期間も有意にNAC群で良好であった。[結論]補助的一時的部分同所性肝移植において、Free radicalscavengerであるNACを投与すると,mitochondrial oxidative stressやneutrophil oxidative stressが抑制され,肝細胞障害,肝ジヌソイド内皮機能が保持され、術後経過も良好であることが示された.
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