研究概要 |
リポソーム膜の構成要素であるリン脂質膜の組み替えによって,相転位温度の理論値が40℃に設定された熱感受性リポソームを作製した。このリポソームにアドリアマイシン(ADM)を封入し、ラット下肢に移植した皮下腫瘍に対して下記の各群にて抗腫瘍効果を検討した。 (1)ADM封入熱感受性リポソームのみを静注した群,(2)ADM封入熱感受性リポソーム静注に40℃の加温を行なった群,(3)リポソームに封入しないfreeのADMのみを静注した群,(4)リポソームに封入しないfreeのADMの静注に40℃の加温を行った群,(5)リポソームを用いず40℃の加温のみの群,以上の(1)から(5)の5群間で検討したところ,(2)群のみで顕著な抗腫瘍効果が得られた。この結果はリポソーム内に封入されていたADMが40℃の加温によって腫瘍内に選択的に放出されたことを示すものと考えられた。次いで現在,本リポソームの正確な相転位温度を測定する方法を検討しつつ同時に、腫瘍内のADM濃度ならびに本リポソームの体内薬理動態につき検討中である。
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