1.骨折への使用に関する応用実験 予備実験として、家兎30羽の脛骨にドリルにて2ヶ所の穴をあけ、ハイドロキシアパタイトセメントに石膏を混和したものを、骨髄腔に注入して、骨形成を観察した。全例においてハイドロキシアパタイトセメント周囲の骨形成は良好であり、石膏による骨新生の阻害は認めなかった。 また橈骨遠位端骨折の臨床例5例において、骨欠損部にハイドロキシアパタイトブロックを挿入充填し、骨形成および術後経過を観察した。全例において、充填部でのハイドロキシアパタイトブロックの骨癒合は良好であり、骨折周囲の関節機能も良好に保たれ、良好な経過であった。 2.良性骨腫瘍への使用 良性骨腫瘍の臨床例3例に対して、病巣掻爬後にハイドロキシアパタイト細顆粒にフィブリン糊を混和したものを充填し、骨形成ならびに骨との親和性を観察した。全例において、充填部でのハイドロキシアパタイト周囲の骨形成は良好であり、腫瘍の再発を認めなかった。 3.人工関節再置換への使用 まず、予備的にハイドロキシアパタイト細顆粒をフィブリン糊と混和して人工関節と骨との境界面に注入し、経過を観察した。経過観察期間中、人工関節はゆるみがなく、良好な経過であった。 4.関節形成術への使用 変形性膝関節症の臨床例5例に対して、高位脛骨骨切り術をOpening Wedge法として骨切り部にハイドロキシアパタイトブロックを楔状に成型したものを挿入し、術後経過を観察した。全例において、挿入したハイドロキシアパタイトブロックは沈みこみもなく、早期の骨癒合を認め、良好な経過であった。 今後、臨床応用について、実際の症例に用いて経過をみるとともに、実験ではフィブリン糊などの接着剤との混合を調節する。
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