麻薬性鎮痛薬モルヒネの活性代謝物の生成に関与する、ヒトのUDP-グルクロン酸転移酵素(UGT)について研究を行った。モルヒネの活性代謝物、モルヒネ-6-グルクロニド(M-6-G)の生成能には著しい種差がある。本研究では、モルモットとヒトがいずれもM-6-G生成能が高いことに着目した。モルモット肝には、M-6-G生成に関わっていると思われるUGT55Kが存在することから、ヒト肝にもM-6-G生成酵素がcounterpartとして存在するとの作業仮説を立てた。当教室では既にUGT55KのcDNAクローニングを行っていることから、これらをプローブとして、ヒト肝のM-6-G生成UGTのcDNAクローニングを試みた。cDNAの配列のうち基質特異性の決定に重要と考えられる領域を選定し、この部分492bpをプローブとし、ヒト肝λgt11cDNAライブラリー(CLONTECH社)をスクリーニングした。また、新生児にM-6-G生成能があるという報告に従って、新たに0歳児肝mRNAからλZAPIIcDNAライブラリーを構築し、UGT55KのcDNAのうち前記の492bpを含む約1kbpのものをプローブとして用いてスクリーニングを行った。残念ながら、これらによって得られたクローンには新たなUGTをエンコードするものはなかった。このような結果はライブラリーの質に依存するものと考えられる。ヒトのUGT2B7は、最近モルヒネに活性を示すと考えられるようになった。そこで、新たに購入した、ヒト肝臓および腎臓cDNAライブラリーを鋳型にした場合、UGT2B7と考えられるPCR産物が得られ、レベルは低いながらヒト膵臓cDNAライブラリーを鋳型にした場合にも増幅物が認められた。現在、新たなcDNAライブラリーから再スクリーニングを行っている。また、UGTの培養細胞における発現についても並行して検討中である。
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