モルヒネの副代謝物であるモルヒネ-6-グルクロナイド(M6G)は、母化合物のモルヒネよりもはるかに強い鎮痛作用を示す活性代謝物である。本研究課題では、ヒトにおけるモルヒネの鎮痛作用に関わるM6Gの生成酵素を明らかにして、モルヒネの適正使用に寄与することを目的としている。前年度までに、M6G生成能をもつモルモットから、2つのUDP-グロクロン酸転移酵素(UGT55KとUGT59K)をエンコードするcDNAを単離した。本年度、UGT命名委員会より、それぞれUGT2B21およびUGT2B22と命名された。既に、これらのcDNAを、各々単独で、あるいは同時に培養細胞にトランスフェクションして基質特異性を調べることにより、UGT2B21とUGT2B22は、ヘテロオリゴマーを形成することによって、各々のホモオリゴマーによっては見られない、M-6-G生成活性という新たな基質特異性を獲得することを示唆する結果を得ている。本年度は、更に他の基質に対する活性についても同様の検討を行うことによって、UGT2B22は、調べたかぎりでは、何れの基質に対しても活性を示さないことが分かった。また、UGT2B21とUGT2B22cDNAを同時にトランスフェクションした場合には、UGT2B21単独では観察されなかったクロラムフェニコールに対する抱合活性が認められるようになった。これらのことは、UGT2B21とUGT2B22が、ヘテロオリゴマーを形成することによって、新たな基質特異性を獲得したことを強く支持している。このような現象が、モルモットの2種のUGT isoformにのみ起こるとは考えにくいことから、ヒトのUGT isoformについても、同様の現象が見られるものと考えている。3年間の本研究課題の最終年度にモルヒネの適正使用に重要な示唆にとむ研究結果を挙げることができた。
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