今回我々は、MRIによる3Dボリューム撮影法を用いて頭部の硬組織・軟組織を含めた3次元的な計測を行なうシステムを開発し、これによって正常咬合者の計測値の平均や標準偏差を求めることを目的とした。さらに本法を臨床応用しそれぞれの疾患群と基準値との相違・疾患群同士の比較検討を行なうことを研究目的とした。 医局員・学生を中心としたボランティアを対象に、MRI装置を使用し、3Dボリューム法を用いて頭部を撮像した。各種シークエンスを変更させながら、従来のセファロで計測可能であった項目を最低網羅するような最適のシークエンスを決定した。また、軟組織のリファレンスとなるポイントを求め、再現性を確認した。 得られた画像データをワークステーションに転送し、それぞれの距離・角度・三次元的座標等を計測した。また、軟組織の距離計測の精度を検討するため、三次元デジタイザを用いて実際の距離を測定し、MRIから得られたデータと比較した。 今回使用したMRスキャナは磁場の乱れを自動的に補正する機能が装備されていたため、予想された磁場の乱れによる歪みは1.6%以内と無視できる程度であった。最適なシークエンスは、3DのSPGRを用いたGRE法であったが、歯への補綴物などで信号が欠損したり、画像に歪みを認めた症例があった。今後、金属によるArtifactが最も少ないFast SE法などの導入も検討している。 また、正常咬合者のボランティアを対象に、第1次ボランティアスキャンで決定したシークエンスの下で3Dボリューム法を用いて頭部を撮像した。頭部X線規格写真と比較すると、ほとんどのポイントがMR画像でも描出可能であったが、N点など骨と骨の結合部位ではMR画像の欠点が指摘された。ただし、軟組織の描出については最適であると考えられた。
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