研究概要 |
イヌおよびサルにおいて,根分岐部に限局した貫通型の外科的歯周組織欠損を作製し,根分岐部病変の閉鎖に対するrhBMP-2の効果を検討した. ビ-グル犬6頭の下顎左右第2,3,4前臼歯,およびアカゲザル下顎第一,第二大臼歯に,貫通型の外科的歯周組織欠損を作製し,実験群にはrhBMP-2溶液をPGS(ポリ乳酸ポリグリコール酸共重合体/ゼラチンスポンジ)に滴下,吸着させた埋植材を,対照群にはPGSのみを埋植し,埋植材を完全に覆うように歯肉弁をCEJよりやや歯冠側よりで縫合した.ビ-グル犬は10週後に,アカゲザルは12週後に屠殺し,通法通り,脱灰パラフィン連続切片を作製し,組織学的評価を行った. <ビ-グル犬における結果> 実験群の多くの標本では,分岐部内のほぼ全域が新生骨で満たされており,17歯中12歯は分岐部内に上皮組織が全く観察されない完全閉鎖を呈していた.一方対照群では数例を除き骨の高さの増加はほとんど観察されず,分岐部の完全閉鎖は17歯中5歯のみで認められた.組織計測の結果,新生骨および結合組織性付着の形成量に関して,実験群の方が有意に大きな値を示した.セメント質形成量については両群間に有意差が認められなかった.実験群対照群ともに,新生骨が多量に形成された標本においては骨性癒着が観察された. <アカゲザルにおける結果> 組織計測の結果,新生骨の形成量に関して,実験群の方が有意に大きな値を示したが,実験群における分岐部の完全閉鎖は12歯中2歯のみで認められ(対照群12歯中1歯),ビ-グル犬におけるほどの好成績は得られなかった.骨性癒着は認められなかった. <結論> rhBMP-2による歯周組織再生の反応には種差がみられるものの,rhBMP-2の適用が,従来の再生治療では困難とされていた貫通型の根分岐部病変の閉鎖に有効であることが示唆された。
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