研究概要 |
当教室ではCAD/CAMシステムを用いた歯冠補綴物の自動製作について一連の研究を行ってきた.しかし,被削材として用いるセラミックス材料は,材料の力学的特性を考慮してCADを行わなければならない.そこで本実験ではクラウンの厚みが,強度に与える影響を検討するために,10%のテ-パ-を持つ単純形状の支台歯をもとに,咬合面と軸面の厚みを変えたクラウンのデータを作成し,このデータをもとに有限要素法による構造解析と,CAD/CAMシステムの加工装置を用いて製作したセラミッククラウンの圧縮試験を行い,それぞれを比較検討した.有限要素法解析でセラミックスの破断に一番関与する引張り応力は,ボールベアリングの荷重点直下で最大の値を示し,咬合面の厚みを0.5mmから2.5mmまで0.5mm間隔で変化させると,応力値は62.5kg/mm2から56.7kg/mmとなり,厚みの変化に対して応力の変化がはっきりと現れていた.また圧縮応力は斜め下外方に向かっていることがわかった.また補綴物軸面の厚みを変化させたモデルでは,厚み0.8mmで57.4kg/mm2,1.0mmで57.5kg/mm2,1.2mmで57.6kg/mm2となり咬合面の厚みの変化に比べあまり影響がないことがわかった.これは今回の実験で,支台歯部分を金属に設定していたため,上方からの力のほとんどを支台歯が受け止めてしまい,マージンにまで力が伝わらなかったらめと考えられた.そこで有限要素法解析モデルの支台歯部分のデータを,象牙質のものに変えて計算したところ,荷重に対して支台歯部分の変形が起こるため,マージン部分においても引っ張りの応力が働き,全体の応力分布にも違いが現れた.圧縮試験では,咬合面部分の厚みが1.5mmの試料の破壊荷重は178kg±10,2.5mmの試料では200kg±13となり,いずれの場合もボールベアリングの接触点直下の部位から斜め下方向に破断面ができた.こうした応力の形式は,有限要素法による解析を十分裏付ける結果となった.
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