研究概要 |
ヒトの歯を電気刺激すると刺激強度に応じて頭皮上から誘発脳波が記録できる。この誘発脳波を体性感覚誘発電位といい、潜時150〜300msecの振幅が刺激の強度および痛みの強さに比例することが知られている。従来の体性感覚誘発電位の記録は一定の強さの刺激を反復して歯の表面に与えて、刺激に対応して得られた誘発電位を加算平均してきた。しかしこの方法は反復刺激に対する刺激に慣れが生じたり、複数の強さの刺激において刺激順序の設定にも問題がある。そこで、複数の強さの刺激を歯にランダムに与えて体性感覚誘発電位を記録するシステムを開発した。このシステムは電気刺激装置として定電流ランダム刺激アイソレータをもち、誘発電位加算装置として脳波記録計とデータレコーダを組み合わせたものから構成されている。さらに、歯と刺激電極と電流漏洩のモニターとして微小電極抵抗計を設置した。そこで、1〜6種類の強度のランダム歯牙刺激による誘発電位の波形をリアルタイムで表示するため、歯への電気刺激を強度別に識別し、刺激強度に対応して誘発電位を加算平均するパーソナルコンピュータ用ソフトウエアーをプログラムし、刺激強度に対応した体性感覚誘発電位の波形を記録できるか否かを検討した。健全な上顎右側中切歯唇面に刺激用電極を装着し、刺激幅1msec.の単発矩形波を1Hzで歯に与えた。歯への電気刺激によって生じるSEPを記録するために、脳波記録用電極をC_zとF_zに置き、誘発電位検査装置(MEB-5304,日本光電社製)にて記録した。その結果、3および4種類の強度を持つランダム刺激では潜時150〜300msecの成分が刺激強度に対応し、痛みの強さとも関連性がうかがわれた。このことより、歯の電気刺激による体性感覚誘発電位の測定は麻酔薬、麻薬、鎮痛薬、鎮静薬などの鎮痛効果あるいは麻酔効果の判定に応用できる。
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