研究概要 |
処置用チャンネル付関節鏡の概念は膝関節では実用化されているものの,顎関節ではレンズ型関節鏡の実用的解像力の保持のため、小型化に限界があり,大西の考案した楕円形の断面をもつ3.8X2.0mmの口径が最小であった.この大きさでは,顎関節症の進展例では関節腔の狭小化のため使用が困難であり,利用範囲に制限が認められ,実用化されるには至っていない.一方,ファイバー型関節鏡は,従来単位断面積あたりの画素数に制約があったため,小型化できるものの実用的解像力に難点があった.最近,従来の単位断面積あたりの画素数が5倍(15,000画素)となる高密度なファイバーが開発された.そこで,この技術を応用し,平成8年度は,従来より汎用されているストライカ-社製顎関節鏡の外套管(φ2.9mm外径)の口径,長さおよびコネクター部の形状を同一にし,同関節鏡と関節鏡同士の互換性を可能にする処置用チャンネル(φ1,1mm)付細経顎関節鏡の設計ならびに試作を行った.さらに,眼科マイクロ手術用器具にヒントを得て,処置用チャンネル内に挿入可能な関節鏡手術用鉗子,剪刀,プローベ,電気メスを試作した.解像度および焦点深度試験から最適焦点深度を5.5mmとした.術前の顎関節滑液の生化学的性状を検討するため,MRIおよびX線検査で顎関節症III型(III型群)または顎関節症IV型(IV型群)と診断された患者の顎関節,および健常なヒトの顎関節(健常群)より顎関節滑液を採取し,滑液中のヒアルロン酸(HA)の分子量とその分解関連酵素のN-アセチル-β-グルコサミニダーゼ(NAG)活性を探索した。その結果,顎関節滑液のHA分子量は健常群>III型群>IV型群の順に低分子化の傾向を示し,顎関節症の進行の程度を反映していた。さらに,NAG活性は健常群<III型群<IV型群の順に高く,その活性上昇はHA分子量の低下と逆相関していた。
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