体腔内ESR内視鏡は、基本的には内視鏡とサーフェスコイル型のESR装置とを組み合わせた構造の医療機器である。この測定装置は、人の体に無侵襲的に挿入することができ、内視鏡システムにより体内の臓器などを画像として観察しながら、その一方でESRコイルによって目的とする組織でのESRスペクトルをリアルタイムで観測してフリーラジカルに関する情報を得ることができるという特色を持っている装置です。本研究では、以下に示した点について検討し、体腔内ESR内視鏡システムのプロトタイプを開発した。 1.ESR内視鏡プロトタイプの製作:ループコイル型ESRとCCD型内視鏡を組み合わせる為に、ESRループコイルの形状等の検討、マイクロ波搬送共鳴システムの検討を行った。その結果、ループコイル形状は、円形状で、直径2mmでも十分ESRスペクトルを観測することが可能で、また、マイクロ波の搬送ケーブルは1mm以下にすることができ、内視鏡のプローブ部の直径は3mmと、従来のプローブとほぼ同じ太さとなり、全く問題なく使用できると思われる。 2.小型軽量磁場発生装置の試作:ESR内視鏡では500-600ガウス程度の均一磁場が必要で、本研究ではこのような磁場発生装置として永久磁石を用いたシステムを試作した。今回試作したシステムの総重量は150-200キログラムで、従来の約5分の1の重量に抑えることができた。 3.多機能ループコイルの開発:体腔内の酸素濃度を測定できるループコイル、並びに水中で不安定で短寿命のフリーラジカルを捕獲することができる、トラップ剤で被覆されたループコイルを試作した。現在、人の胃を模擬したファントムを用い性能の検討を行っている。
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