リコンビナント・ヒト自己抗体の大量産生とその応用

1996 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 08557150
• 研究種目: 基盤研究(B)
• 応募区分: 試験
• 研究機関: 京都大学
• 研究代表者: 赤水 尚史 京都大学, 医学研究科, 助手 (20231813)
• 研究分担者: 松田 文彦 京都大学, 遺伝子実験施設, 助手 (50212220) ; 神田 秀俊 栄研科学株式会社, 免疫センター, 研究員
• キーワード: 免疫グロブリン遺伝子 / TSHレセプター / 抗TSHレセプター抗体 / バセドウ病 / リコンビナント抗体

研究概要

バセドウ病や機能低下症の一部では抗TS受容体抗体が発症や病態形成に直接的に関与することが知られており、このような研究は同病における抗TSH受容体抗体の意義を分子レベルで研究する上で極めて重要である。また、抗TSH受容体抗体アッセイは、臨床的にもバセドウ病や恒常腺機能低下症の診断・臨床経過の観察・治療の指標に広く用いられており、極めて有益である。その際、同抗体を用いた研究や検査には大量の患者血清が必要な場合があり、病原性を有した同モノクローナル抗体の作製が期待されている。しかしながら、ヒト・モノクローナル抗体をハイブリドーマ法で作製するには優れた骨髄腫細胞がないため困難であり、EBウイルス法では大量の抗体を永久的に産生することは不可能である。我々は、これまでにバセドウ病及び原発性甲状腺機能低下症患者リンパ球から直接、EBウイルスを用いて多数のモノクローナル抗TSHレセプター抗体(IgG型を含む)産生リンパ球をクローニングし、同リンパ球から免疫クロブリン遺伝子を単離してきた。また、研究分担者の神田らは遺伝子工学的にリコンビナント抗体を産生するシステムを開発し、すでに幾つかの工業所有権を有している。
今回我々は、単離された抗TSH受容体抗体遺伝子を用いて2クローンのコンビナント抗TSH受容体抗体を遺伝子工学的に大量作製することに成功した。これによって、同抗体を標準物質として種々の基礎的研究や新たな検査・治療への応用に貢献せしむることが可能と考えられる。今後、作製されたリコンビナント抗体に関して、TSH受容体との結合親和性・抗体結合エピトープ・免疫沈降の可能性・ウエスタンブロット分析への応用性などその特徴について検討し、標準物質としての実用化が可能かどうか見究める。さらに、同抗体をマウスにin vito投与して病原性を確認する予定である。

研究成果

• [文献書誌] Akamizu T,Matsuda F,Okuda J,Li H,Kanda H,Watanabe T,Hongo T,Mori T: "Molecular analysis of stimulatory anti-thyrotropin receptor antibodies (TSAbs) involved in Graves' disease : Isolation and reconstruction of antibody genes,and production of monoclonal TSAbs." J Immunol. 157. 3148-3152 (1996)
• [文献書誌] Okuda J,T.Akamizu,F.Matsuda,H.Kanda.T.Watanabe,T.Mori: "Production of recombinant inhibitor anti-TSH receptor antibodies involved in primary hypothyroidism." J Endocrinol Invest. 19 : Suppl.to 6. 34- (1996)
• [文献書誌] Akamizu T,Matsuda F,Okuda J,Li H,Kanda H,Watanabe T,Hongo T,Mori T: "Gene-engineering production of stimulatory anti-thyrotropin receptor antibodies involved in Graves'disease." 10th International Congress of Endocrinology. 81- (1996)
• [文献書誌] Koshiyama H,Sellitti DF,Akamizu T,Doi SQ,Inoue D,Takeuchi Y,Sekaguchi H,Fukunaga Y,Nakao K: "Cardiomyopathy associated with Graves'diseases : A possibility of "Graves'cardiomyopathy"?" 10th International Congress of Endocrionology. 714- (1996)
• [文献書誌] Uematsu-Yanagita M,Inoue D,Sekaguchi H,Fukunaga Y,Akamizu T,Koshiyama H,Nakao K: "Familial occurrence of hypothyroidism with thyroid stimulation-blocking antibody." 10th International Congress of Endocrinology. 639- (1996)
• [文献書誌] J.Okuda,T.Akamizu,F.Matsuda,H.Kanda,T.Watanabe,T.Mori: "Production of recombinant inhibitory anti-TSH receptor antibodies involved in primary hypothyroidism." 23rd Meeting of European Thytroid Association,Amsterdam,The Netherlands. 34- (1996)
• [文献書誌] M.M.Sale,T.Akamizu,T.D.Howard,H.Iwasaki,J.Jennings-Gee,S.S.Rich and D.W.Bowden: "Genetic mapping of the thyroid stimulating hormone receptor and association with autoimmune thyroid disease in Japanese patients." Proceeding of American Society of Human Genetics. (Abstract). (1996)
• [文献書誌] 赤水尚史: "甲状腺疾患におけるTSH受容体自己抗体" 内分泌・糖尿病科, 8 (1996)
• [文献書誌] 赤水尚史: "自己免疫性甲状腺疾患におけるTSH受容体抗体の意義-抗体側からみた分子レベルの研究" 医学のあゆみ, 3 (1996)