研究概要 |
1993年10月に打ち上げられたスペースシャトルコロンビアに搭乗させた8週齢ラットとそれにシンクロナイズさせた対照ラットの胸部脊椎骨と胸部傍脊柱骨,筋肉の解析を行った。14日の宇宙旅行でラットの骨塩量、硬度に変化は生じなかったが,骨組織学的には,骨吸収の低下とそれに続く骨形成の低下が認められ,低回転型骨代謝異常を示し骨成熟が阻害される骨モデリング障害が生じることを見いだした.また,四肢の筋肉はミトコンドリア障害とATP減少,ベータ-アドレナージック受容体の障害が生じることを明かにした。さらに各群のラトの胸部傍脊柱筋よりmRNAを抽出し、cDNAを合成後その遺伝子発現の差を捕られるためにmRNA Diffrential Display 法を施行した。その結果、12の変化する遺伝子が捉えられた。まず、これらが既存の遺伝子とホモロジーを有するものであるかデーターベースを用いて検索した。宇宙旅行により上昇したものは、ストレスに関するものであり、ヒートショックプロテイン(HSP70)とそれに関連する分子TCP-1であった。一方、減少する遺伝子はミトコンドリア代謝関連遺伝子(チトクロームオキシダーゼ、アデノシンヌクレアーゼトランスロケーター)と筋成熟に関連する分子であるmyocyte-specific enhancer binding factor(MEF-C),アルドラーゼなどであった。さらに、いままでに報告のない新規遺伝子と思われるものも釣り上がってきた。以上、予定していた当面の研究目的は達成できたと思われるが今後、これら遺伝子の機能解析を進めて行く予定である。
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