小麦粉のキモトリプシン水解物からゲルろ過、HPLCで抗原を単離し、アミノ酸配列を決定した。その1次構造は(SQQQ(Q)PPF)_4で、このペプチドは低分子量グルテニン由来であった。エピトープの最小単位はQQQPPで、ペプチド主鎖は全てトランス構造であった。QまたはPに親和性を示す酵素をスクリーニングし、小麦粉を低アレルゲン化する方法を確立した。方法の概要は、小麦粉に0.6加水してプロテアーゼで37℃、2時間反応させるというものである。反応生成物の抗原性を小麦アレルギー患者血清を用いたIgE-ELISAにより評価したところ、検出限界以下にまで低下していた。 この低アレルゲン化小麦粉を用いて患者用低アレルゲン化製品を作製した。グルテンが水解されたため、低アレルゲン化小麦粉は擬塑性のバッターであった。気体保持能およびでんぷんの糊化特性などを利用して、低アレルゲン化製品を作製することを試みた。バッターに水、油脂、界面活性剤などを添加してカップケーキを作製し、比容積、官能評価などから最適条件を検討した。油脂の添加により咀嚼時の不快な粘着性が改善された。界面活性剤の添加は内層のキメを良くした。バッターの一部を糊化させたもの、水、界面活性剤、膨化剤などを添加してウェファを作製し、テクスチャー解析、官能評価などから最適な条件を検討した。バッターに水を加えることにより、好ましい嗜好性をもつ製品が得られた。界面活性剤の添加は、咀嚼特性の向上に有効であった。この原料は焼成したときに着色しやすかったので、130〜140℃で焼成することとした。
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